幻のキノコ、アジアクロセイヨウショウロ

さてみなさま、聞き馴染みのない名前を見て不思議に思われたのではないでしょうか。
アジアクロセイヨウショウロとは、一般的に黒トリュフと呼ばれる菌類の一種です。
トリュフが珍しい・高級なキノコであることはご存じかと思いますが、なぜかと言うと地下生菌と呼ばれる地面の中に子実体(いわゆるキノコ)を作る菌類だからです。

 

実際の写真。確認のために割ってみるととても芳醇な香りで、トリュフの仲間であることを確信した。

 

 

園内の手入れ中に偶然発見したのですが、キノコの仲間は同定(種類の見極め)が難しいので専門家の国立科学博物館に診断を依頼しました。
するとアジアクロセイヨウショウロ(Tuber himalayense Zhang and Minter)だと連絡があり、そして光栄なことに、標本として収蔵してもらえることとなりました。

ちなみに一口にトリュフと言っても、外見から白トリュフと黒トリュフに大分され、さらに黒トリュフは夏が旬で中身はベージュ色のサマートリュフと冬が旬で中身は濃い色をしたウィンタートリュフに区別されます。もっとも高価とされるのは白トリュフで次いでウィンタートリュフ、サマートリュフとなり、今回発見されたものはウィンタートリュフに分類されるようです。より詳しい分類としては世界では最低でも180種、日本では20種が確認されているようです。

さて、本題はここから。
今回発見した黒トリュフは2個だったのですが、1個は国立科学博物館へ移譲したため残った1個を使って何をしようか?という話に。さる園・野草園で展示するため標本に加工したほか、国産化に向けた人工栽培の研究がされていて収穫までに至ったという話を聞き栽培実験も始めました。
実はトリュフの仲間は高価なキノコとして有名なマツタケと同様に菌根菌と呼ばれる菌類で、植物と共生(寄生ではない)しており人工栽培が非常に困難なキノコです。マツタケは名前にもある通りマツ(正確にはアカマツ)との共生関係にありますが、トリュフの場合はマツ科やブナ科、カバノキ科といった樹種と共生関係になります。

播種準備。表面を剥き、すり潰す。

 

 

樹脂標本にした切片。

 

もしかしたら、食事処で高尾山産の黒トリュフがご提供できる日が来るかもしれません。

 

また、盗掘防止や土壌・植物の保護のため、発見した場所等は伏せさせていただきます。

by タツヤ

追記 6月25日

明治の森高尾国定公園

高尾山は1967年に明治100周年記念事業のひとつとして、国定公園に指定されました。高尾山は5,000種類の昆虫と1,300種類の植物がある自然豊かな場所です。この豊かな自然を守る為、国定公園ではすべての動植物の採取等が禁止されています。

多様な動植物に恵まれた高尾山の自然環境を守り大切にしましょう。